twonaの日記

2007-10-17ムナムナダーと王子様・6

第8弓手訓練所


木々の吐息の中、マナ弓手ギルドが作った訓練所の中で訓練をしている。

第8は森とその中に廃屋となった二階建ての小屋を利用した敵性モンスターの拠点施設があると言う設定になっている。

ミッション目的は、敵を殲滅することのみ。

一人だけで行うミッションとしては最難関を誇る高難度ミッションとされている。


「…」

気配を緑の中に収めて辺りを伺う。

街中でのステルス能力シーフ程では無いが、野外でのそれはアーチャー達の方が高い。

マナの視界の先を標的人形の影がよぎる。

「っ」

矢を弓につがえる、が思い直して攻撃体勢を解く。

まずは敵の規模を確認してからだ、単独潜入任務なので敵に囲まれたら失敗になる。

標的人形は、高度な戦闘能力は持たないが、索敵能力と擬似攻撃を行う事により、軽いダメージを訓練者に付与し、戦闘評価をする。

だが軽いとは言え、蓄積すれば重傷にもなりかねない。


マナ、お前さんはなんでか知らないが、突っ込む癖があるんだよな)

ふと、トゥーナの声が脳裏に浮かぶ。

自分の保護者を自認しているその司祭は、戦闘訓練で怪我をしたマナを手当てしながら、怪我の原因に対してボヤく事が多かった。

それだけ、マナが戦闘訓練で怪我をし易かったと言う背景もある。

そして、その原因はマナが敵が密集していようと、強引に攻める特性がある所にある。

何故、自分に突撃癖(ユイが命名)があるか分らない。

ただ、敵と呼ばれる存在を目にすると、焦燥感に心がざわめき、それが嵐に成長すると自分が闘争心の塊になってしまい、敵の停止を見届けるまで安心が出来ない。


何度となく行った訓練で、かなりの確率で突撃癖を制御できるようになった。

しかし、今でも敵を滅ぼそうとする衝動は心に巣くったままなのは、マナ自身が自覚している。


「…」

考えながら敵をやり過ごし、敵の拠点を見下ろす高台に出る。

ザッと確認すると、敵は警戒要員は3。

周囲警戒は2、廃屋内には本隊として同数かそれ以上の数がいるだろう。

(警戒要員を素早く潰して、本隊をおびき寄せて一つずてつ潰すわ)

作戦を決め、一番外周に居る標的人形に狙いを定める。

「ふぁいあっ」

放たれた矢が標的人形の頭を貫く。

急所を射抜かれた標的人形はドサッと、その場に倒れ込む。

その様子にえも言えぬ充足感を覚える、だが、人を相手にする事に対しては自分は苦手だろうと言う確信がある。

この事は彼には伝えていない感覚でもある。

「…」

他の標的人形に気が付かれて居ないか気配を伺う。

だが、敵の動きに変化は無い。

「よしっ」

まずは、ファーストアタックは成功だ、次の矢を矢筒から抜き出しマナは行動を開始したのだった。



三時間後、廃屋の二階でマナを背にして座り込んで居た。

敵は全滅、だが自分はポーションを使い切り、重傷までは行かないが、かなり痛いと言う状況だ。

「あいたたた」

傷に包帯を巻いて顔をしかめる、訓練終了の狼煙を上げればすぐにトゥーナが飛んで来るだろうが、それを今はしたくない。

色々な事を考えたい思いが、傷の痛みを超えて自分に語りかけているのだ。

自分は何者なのか、トゥーナと一緒に住むようになってから半年(と、彼が教えてくれた時間概念ではそう言うらしい)の間に、それについて考える事が増えて来ている。

自分が自分である事を認識したのはいつだろうか?と自問する。

ユイに言わせると、それを自己認識の発生、と言うらしいが。

自分にそれが起きたのは半年前だった。

目の前を消えて行く、とても大切な誰かを見送った強烈な喪失感の中でだった。

それから、トゥーナに蘇生をしてもらって(と聞いた)、今の自分の意識を得た…はずだ。

その前後の事は、色々な事があり認識しきれて居ない。

古い記憶を掘り出してみようとすると、頭痛吐き気が自分を襲い、それを阻害する。

まるで何かが…もしくは何者か…自分の意識では歯が立たない存在邪魔をしているようだ。

そんな自分に、トゥーナ達が言葉を教え、様々な生きる術を覚えてくれた事で今に至っている。

その課程で彼自身、どのように知性を回復するかについて知恵を絞ったらしい。

前に大聖堂の大司祭様が苦笑混じりに、いつもはフラフラして騒ぎを起こしているトゥーナが、大聖堂や魔術ギルドにある知性に関する本を読みあさっていた事を、別な司祭と話して居たのを思い出す。

あの時の彼は必死だったと、当時を知る人達は言っていた。

そのおかげで自分には知性と言うものが回復されたのだろう。

しかし、知性が回復するにつれて、今の自分とは違う自分が居るように思えてならないのだ。

それは、彼が自分に何かを話す時に、その違うけど近い誰かに話し掛けているようだと感じてから、その疑念に近い感情に自分は言い知れない焦燥感と孤独感を覚えている。

それが、自分が過去を思い出せないと言う事に気が付いてから、その事に対しては人としての不完全さと言うマイナス感情を呼び出してしまっている。


(だけど、自分はなんでいろんな〝声″が聞こえるのだろう?)

この疑問は、目覚めてから少し経った後に、何かが上げる声を聞いてからだ。

そして、トゥーナが被っているムナック帽子と彼が会話をしている事に気が付いてからだ。

詠香、と彼が呼んでいるらしい彼女はムナック帽子に宿っている存在のようだ。

そして、その名前と声は自分の記憶巣を強烈に刺激するものだった。

多分、彼女の事を自分は知っていた、だけど、何も思い出せない。

その手に届きそうだけど届かない、その感覚が自分の心を掻き乱す。

「彼と詠香ちゃんはどんな関係なのかな?」

様子からは、必ずしも親しげでは無いようだ。

言い争う感じもしたり、だが、どこかでお互いを信頼をしている風ではある。

そして、詠香が自分に対して服従を誓っているらしい事が分かっている。

〝姫様″と言っているようだ。

「姫様…」

一般的には、女の子が憧れる存在だろう。

大聖堂でアコライトさん達と色々なお手伝いをしていた時に、フェイヨン王家の姫であるクシナダ姫を見たアコライト少女達が、興奮し憧憬を宿した表情で彼女を見て居たのを思い出す。

だが、その〝姫様″と言う言葉に自分が感じたのは、漠とした不安だった。

そしてその不安の元を探ろうとすると、拒否反応が起きてそれも叶わなくなるのだ。

「ふうっ」

熱い吐息を吐き出す、怪我をしているため、体内の炎症が起きている為に発熱しているようだ。

「私は、誰なのかな?」

そう呟くと、不意に悪寒が走り首をすくめる。

自分が今の自分では無いのではないかと言う所までに想像が及んでしまったのだ。

不安な事は他にもある。

詠香の声が聞こえる事に加えて、それ以外の声が聞こえる事だ。

フェイヨンでも、いくつかの声を聞いたし、トゥーナと一緒に行った冒険で出会った大きな熊さんの声も聞こえたのだ。

そして、その全てが自分に向けて助けを求めていたと言う事が自分を不安がらせているのだろう。

自分は、そんな力は無いのに…今の自分は自分で自分を守る事しか出来ない、ただの少女に過ぎない。

誰かを救う事等できるだろうか?

「だけど、あの熊さんありがとうって言ってた」

トゥーナと、そして確かに自分に感謝していた熊の事を思い出す。

自分は、何かしたつもりは無い。

ムナムナダーと言う、自分を守るために成る最強力とそのお友達が傷付きながらも熊さんを救った。

自分はそれを見て居たに過ぎない。

だけど…

記憶が薄れていた、自分が知らない自分が居たの?」

あの熊さん慟哭を聞いた後、記憶が薄れていた事は確かだった。

そして、気がついた時に前に居た熊さんが言った感謝言葉…。

「貴女が俺の言葉を聞いてくれて助かった。感謝する」

と言う言葉に戸惑ったのは確かだ。

何故、何故、何故…っ!

近頃の自分の思考はこればかりだ。

自分が何故ここまで思い出さそうとしているのか、わからずに思考が彷徨っている。

2007-09-27むなむなダーと王子様

「どうして、あんな嘘を言ったんだ?」

夜営地までの道すがら、シニャがユイに聞く。

「本当の事を言ってみたとしても、信用されないだろうし。下手するとこっちに疑念抱かれるしね。機械人形については、公式なレベルで知られてないのがネックよね」

「んー。そうかぁ…確かに知られて無いってのは厄介だな」

「どこかの、組織が、認定してくれればいい、のよ」

歌音が珍しく口を挟む、それだけに危機感を感じているのだろう。

「…そうだね」

相槌を打ってフィリオリは考えに沈む。

会話の途切れた奇妙沈黙の中、自分達の夜営地に着いた一同をノココンとしろかぜが迎える。

「いよう、どうだった?」

陽気なノココンの声がかけられる。

「酷かったですけど、助けられて良かったです」

その声に安らぎを覚えてエイナが言う。

「それは重畳」

古臭い言い方をするしろかぜに、笑い声が上がる。

「取りあえず、これを持ち帰ってノデンさんに押し付けちゃいましょう。それで、各ギルドへの働き掛けをどうするか決めましょ」

思索から意識を戻して、フィリオリが皆を見渡して言う。

「いいのか?全面的に奴等とやり合うかもしれないぜ?」

懸念の色を滲ませてロンが言う。

前面的な事になると、厄介な事になるかも知れない。

下手をすると消される可能性がある。

「敵が分かりやすくなった方がいいでしょ。今回みたいに戦った事が事実上無効化するって言うのは困るわ」

「それはそうだが…」

キモは、フェイヨン王家が持っている類似技術に関しては言及しないことね」

「どういう事?」ユイが聞いてくる。

「ここまでの経緯を考えると、プロンテラ大聖堂だけが技術の秘匿を行っているとは考えにくいでしょ。フェイヨン王家、モロク王家、ゲフェン魔術ギルドジュノー評議会…各国家の中枢が機械人形技術を持っていると考えていいでしょうね」

「…随分と突飛な推測じゃないか?」

「そう?国家存在するそれだけで秘密を抱え込むものよ。新旧にかかわらずね。この技術やこれに近い技術は、どこの国家にもあって、なんらかの理由があって表面に湧出させたんでしょうね」

「それに俺達は巻き込まれちまった訳か」

「そうね。口火を切ったのは師匠さんかも」

「だとしても、師匠も巻き込まれただけさ」

あの洞窟ライズの言っていた事を思い出す。

「そうかもね、そして話が戻るけど、多分フェイヨン王家が同じ技術を持っていた場合、それをも公式に否定した場合、抵抗は強いと思うわ」

「じゃあ、どうするんだ?放置するのか?」

「そうじゃ無いけど…。これは熟考した方がいいわね。対応を間違えると不味いから…ね」

「分かった、俺の守りが必要だったら言ってくれ」

しろかぜが言う。

「だな、知らずに関わっちまった事だが、カタは付けようぜ、な?」

ロンが仲間達を見渡して言う。

それに頷く仲間達を見ながらフィリオリは心の中だけに響く言葉を紡ぐ。

(でもね、そうは言っても、私の大切な人達を傷付けた貴方達はね。私が赦さない事は確定しているんだけどね?)

数多く居る大神官候補者としての特権を使い、フィリオリはロンからの話を聞いた後にプロンテラ大聖堂に赴き、いくつかの事を調べた。

その結果分かったのは、位階が高い者にしか開示されない記録上、トゥーナには〝聖堂への反逆者″の不名誉称号が与えられて居た。

聖職者登録抹消では無いが、大聖堂から警戒されていると言う事だ、それも最大レベルで。

これに関わるのは良くない、と言う事は十分に分かっている。

下手すると大神官候補では無くなるかもしれない。

…ふと、一つ何かが引っ掛かったがそれを言語化する前に思考から消える。

しかし、それに構わず

貴方達の都合の良い未来なんか見せないわよ)

フィリオリはそう、心の中で呟いて。

これからの事を考え始めたのだった。

2007-09-24むなむなダーと王子様・4

「オリハルコン改造って、最大ランクの難度をもつ改造じゃないか。そんなに数が配備されていたのかい?」

「うん、数は…少なかったの…でも、気になる、わ」

「どう気になるん?」嫌いな人参さんとの戦いに負けつつあるノココンが、それから目を逸して聞いてくる。

「えっと…」

話そうとするが、そこで口ごもってしまう。

「んとね。歌音はここらへんのモンスター過去にここらへんで朽ちたキャラバンアイテムを使って武装を強化しているから気をつけて、て言いたいみたいよ」

人と話すのが限界になった歌音に代わり、

事前に話していたのだろう、フィリオリが歌音の言葉を引き取って言う。

「それに、オリハルコン改造を出来るゴブリンだとしたら、そんな事例は初めてだしね」

「それに、一時的にも地域のモンスターの勢力が増加してしまう…。そう言う事ですよね?先輩」

エイナが人差し指を唇にあてながら言う。

「そんなもんかね」

「下手すると〝新種報告書″の書き手になれるわよ?」

いたずらっぽく言う。

「やだやだ。金を貰えてもあんな面倒なのをやっていられるか」

新種報告書と言うのは、各ギルドが未知のモンスターの出現に対抗するために用意してある情報交換のための報告書である。

書き記された情報は、ギルドのチェックを経て最優先で告知され、情報提供者には謝礼が支払われる。

ただ、それだけに情報採用するチェックは厳しく、それが煩雑である事を嫌う冒険者も多い。

ノココンが渋い顔をしているのはそういった事情がある。

「そおねぇ…」

「でも、歌音ちゃんがそう言うのが得意だし、書く段階になったら任せてみたら?」

ご飯を飲み込んでユイが言う。

「歌音、頼める?」

「うん、わかったわ」

語尾が小さくなったがしっかりと頷く。

「大丈夫よ。分らなくなったら一緒にやってあげるから」

フィリオリ。

失敗を恐れやすい歌音はこう言ったケアを忘れないのが仲間に求められている。

「誰かが、ゴブ用の武器を供給したっていう線はねぇか?」

と、ロンが口をはさむ。

師匠が前にやり合った連中は、こっちの領内で何かを試していたみたいじゃん。その線は無いかね」

「確かに、彼はそうは言って無かったけど、あの様子だとそんな感じね。でも、たかがゴブリンときにオリハルコン改造を施した武器を供給するのは効率悪くない?」

大聖堂云々についてはトゥーナ本人は隠しているつもりだが、実はある程度は筒抜けだったりする。

「肝心な所は言わない割に、外堀がスカスカだから解りやすいよね」

とニヤニヤと笑いながらシニャが言う。

「そうね、あそこまで裏がありまくりの言動していて、あまつさえそれがバレてないって思い込んでいるのは、ここまで来ると清々しいわね。で、取りあえず、今までは彼の気にしている機械人形には出会って無いわよね?」

「ああ、もっと居ると思ったんだけどな」

「うーん。貴方達が戦ったのは信じるけど、正直そんなのを大聖堂がやってるって信じられない、と言うより信じたくないわね」

半生を王都の大聖堂で過ごしたフィリオリがボヤく。

「とは言ってもな…」

そう、何かを言いかけたロンを一夜が止める。

「?」

怪訝そうなロンの目の前で、一夜が鎧から重たげな音を立てて立ち上がる。

「様子がおかしい、東のパーティの方から音が消えた」

「そう言えば…」

ノココンが頭上の夜空を見上げて見る。

まだ、残照の吐息が残っている。

さすがに寝る時間では無い、それに物音が消えたのはかなりの異常事態だろう。

「どうする?」

ラクルがカイザーナックルを指に嵌めながら言う。

フィリオリが見ると、仲間達は既に戦闘の準備をしている。

安易な希望観測をせず、最善の準備をするのが良い冒険者の条件だ。

「ロンは隠れて先行偵察をして、偵察位置は東方面、あちらの夜営地点まで行く必要は無いわ、敵の浸透を感知するのを第一にしてね。他のみんなは後衛を守るディフェンスモードAで待機。ノコさんだけは離れて樹上から索敵をよろしく」

手早いフィリオリの指示に従って仲間達が配置につく。

その気配を背中に感じつつロンは気配を消したのだった。


「なぁ何が来ると思う?」

迎撃体勢をとっているシニャが話し掛けてくる。

「わからないわね。歌音、こう言った事例はわかる?」

「あ…えっと?」

迎撃準備に気を取られていた歌音が驚いたように聞いてくる。

それに、もう一度説明を入れるフィリオリ。

「うん、クローキングをするモンスターは、何種類かいる、けど…」

ここで一息つく。

サンドマン系は生息地域が違うから、上位の魔族も考えられる…わ」

「そうなると厄介だなぁ。静かに来るのはレイスか?」

レイス…通称風船と呼ばれる上位アンデッドは浮遊して行動するため、接近が分りにくい。

同じタイプにイビルドルイドも居るが、かのモンスターは、神を裏切った責め苦にさいなまれており、その苦悶の声で接近は解りやすい。

「かも…」

「ま、推測だけど。皆気をつけて」

そうフィリオリが言い、辺りには沈黙が広がる。

五分程経った頃合で、唐突にその沈黙が破られる。

ガウンガウンッ!と言う銃声が辺りに響き、複数の人間の物音が入り乱れる

音の接近具合から、ロンが〝何か″に接触し引き連れて来たようだ。

さっと仲間達に緊張が走り、それぞれ戦闘体勢に移行する。

まず、視界に飛び込んで来たのはロンだ、両手にさっきまで使って居なかったカタールを装備している。

そして、信じられない事に右肩口と右脛から血を流している。

回避能力に長けたロンでは考えられない事だ。

「ロン、大丈夫なの!?」

ヒールをロンへ飛ばしながら聞く。

「ああ、すぐに人形が来る。最大火力の集中砲火をかけるぞ」

「わかった!皆?」

人形、と言うフレーズに不自然さを感じながら仲間達に指示を飛ばす。

「っ!」

ロンが余裕無く飛びすさる、一瞬前までロンが存在していた地面が弾け、表土がごっそりと持っていかれる。

「ちっち!」

独特な呼吸音がして、ノココンの弓から連続発射された矢が夜の藪に吸い込まれる。

「フシュゥゥゥ…」

奇妙な呼吸音を立てながら、ロンが来た方向から人影が姿を現す。

ガンスリンガー?」

姿、装備は一見してガンスリンガーだ、だが人間とは決定的に違う所がある。

「目が紅く輝いている…?」

歌音が茫然と呟く。

そのガンスリンガーが、フィリオリ達に向けて両手持ちの拳銃から弾丸を撒き散らす。

オートガード!」

一夜が防御のオーラを漲らせて仲間達の前に出る。

「ぬうっ!」

オートガードを使ってもなお強烈な衝撃が襲い、強化された装甲にヒビが入る。

だが、その甲斐あって主な弾丸は仲間達に到達していない。

ソウルストライク!」

ライトニングボルト!!」

歌音とシニャから魔術が飛ぶ。速射を意識した準備だったので、大魔術は準備していない。

すぐに大魔術の準備に入る二人。

「効いているけど…ダメージはそれほどじゃ…ないか…って!?」

ダメージ計算をしていたフィリオリが、二つの魔術で傷を負ったガンスリンガーの姿を見て絶句する。

機械?」

表皮を吹き飛ばされ、機械部品に構成された内部をむき出しにしたガンスリンガーの紅い機械の瞳がこちらを向く。

バッシュ!」

しろかぜがクレイモアを振るう。

熟達したバッシュは避けるのが限り無くない困難だ。

しかし、難なく避けるガンスリンガー

「なんだ!?」

体勢が崩れた腹部に銃口が擬せられている。

「ちっ!」

発射寸前にノココンの矢がその手首に突き刺さる。

ガウンッ!

再び銃弾が放たれるが、脇腹をかすめるだけに止まった。

「んぐ…」

衝撃波が鎧を貫通して肋骨にヒビを入れる。「なんで当たらないんだよ」

ボヤいてクレイモアを構え直す。

「どうやら、ただの人形じゃねぇようだな」ロンがカタールに何か操作しなから呟く。

人形?」

スタナー(通称:フライドチキン)を構えてフィリオリが聞き返す。

「ああ、こいつは俺達が戦った機械人形さ。その仲間と言うべきかね」

しろかぜが答える。

「こいつはハイド破りと、こっちの動きを先読み出来るらしい。逆に不意を打たれたぜ」

「なんだその能力は…」

ボヤきながらミラーシールドを持ち上げる一夜。

「でも、魔術は有効らしいし、飽和攻撃は有効みたいね?みんな、一斉攻撃いくわよ。タイミング合わせて…起点はストームガストよ………今!!!」

発動タイミングを計り、攻撃指示を出すフィリオリ。

自分が一番先に飛び出して機械人形へ向かう。

機械人形にとっては意外だったらしい、銃口を向けるその動きに逡巡が見える。

警戒外の対象からの攻撃はそれだけ意表を突かれるものだったろうか?

パパパパパと軽い発射音が連続して響き、弾丸がフィリオリに向けて連続発射される。

「はぅっ!」

灼熱感が脇腹に広がり、それがすぐに激痛になる。

回避し損ねた弾丸が、脇腹の皮膚と内臓の一部を持って行ったのだ。

「先輩を癒せ!」

薄れる意識の中で、エイナが自分にヒールを飛ばしているのを聞き、意識が覚醒へと方向転換をする。

だが、ヒールが効いたとしても、受けた衝撃までも無効化出来るわけでは無い。

その結果、傷は治っていたとしてもダメージを律義に記憶し、それを体反応にフィードバックする神経細胞の動きまでを回復するのは難しい。

ヒールで傷が回復するとは言え、傷を受けないに越した事が無い、と回復魔術の教科書には書いてある。

その回復魔術理論を立証するように、フィリオリは大地に膝を突き、激痛の残滓に耐える。

そして、回復する意識の中、仲間達の攻撃の様子が目に入る。

ストームガスト!」

再度銃弾をフィリオリに叩き込もうとした機械人形に、シニャの魔術が決まり、その体が凍結し動きが止まる。

「ちっ!」

鋭い舌打ちの音が聞こえ、その銃を持つ腕にノココンの放った矢が命中し、信じられない事に腕が吹き飛ぶ。

威力から見るに、とっておきのオリハルコンの矢だろう。

「「バッシュ!」」

そこに一夜としろかぜの斬撃が命中する。

×字に切り裂かれ、立つこともままならない機械人形

そこへ

メテオストライク!」

いつもと打って変わった張りのある歌音の大魔術が放たれる。

天空に漂う岩石を自らの希望する対象に隕石として叩き込む魔術だ。

ド…ガガガガガッ!

と始めの大きめの隕石から始まり、無数の小型の隕石が機械人形を打ち据える。

「ガッザザッ…キュウウウ」

火花と奇妙な音を、どこからか出してその場にくずおれる機械人形

そのまま、動作が停止するように見えた。


「終わったの?」

回復が済み、エイナとユイの助けで立ち上がるフィリオリ。

「大丈夫?」

心配そうなユイに笑みを返し、機械人形を見るとその前にロンが立つ。

手には不思議な形になったカタールを持っている。

それが不意に紫電を帯びる。

「何を…」

するの?と言う問い掛けをする間も無く、紫電を纏ったカタール機械人形に叩き込まれる。

バヂィィィッ!!

と言う激しい放電音か辺りに響く。

「何をしたの?ロン?」

近付くと、ロンの持っているカタールは遠目に見るより不思議な形状をしてるのが分かった。

視線に訝しさを乗せてロンを見る。

「なんか、強引にノデンさんに持たされた奴だよ。機械人形にはこれが効くとか言われたから使ったんだけどよ。これ、見てみ」

完全に機能停止した機械人形を指差す。

「…蛇?」

ロンが指差す先には、機械製の蛇が機械人形の胴体から這い出た体勢で、丸焦げなって転がっていた。

「ああ、俺が近付くのを待っていやがった」

「なんのために?」

「さあね、わからんよ」

と、肩をすくめる。

「ま、これでフィリオリにも信じてもらえたかな」

「え?」

唐突にロンに問い掛けられる。

機械人形の事さ」

「そうね…」

どう言葉で否定しても、目の前に転がる残骸と言う事実には一万語を尽くしても否定出来ない。

「これが何体も来たら…私達でもきついわね」

「そう言う事。さて、ご近所の夜営場所に行くか」

物音が消えた他の冒険者の夜営場所に行こうと促すロン。

「これ、どうする?」

と、残骸を指し示す。「持って行く奴は居ないと思うが…念の為、誰か置いて置かないか?」

「ん、分かった。私達は、他の人達の夜営場所に行ってみるわ。しろさんとノコさんはここで待機していて」

「了解した」

「あいよっ」

と、言う二人の声を聞きながら、フィリオリ達は足早に近くの夜営場所へと向かったのだった。



「やっぱりだね」

無惨に倒された冒険者達の遺体を見ながら、ユイは渋い顔をする。

夜営場所は、予想通り酷い事になって居た。

銃器に倒された冒険者の遺体が、あちらこちらにある。

まだ、時間が経っていない為、むっとするような血の匂いがあたりに満ちている。

「いきなりやられた、のかな…」

傷を調べながら歌音が言う。

「そうね…。どう見る?」とユイ。

リザレクションを展開せずに死体を調べるのは、生き返してからでは得られない情報があるからだ。

冒険者は負けず嫌いな性格の人が多い、そのため、事情を聞いても答えない場合もある。

「うん、外周地点に居る…死体さんは背中とか、ランダムに弾痕がある、わ」

ハンカチを鼻に当てながら歌音が答える。

「それから考えられる事は?」

「うん…。不意打ちを食らったのは確か、ね。機械人形が何処を狙ったか分らないけど、ね」

息を整える。

「後の内周の弾痕は、ほとんど前面にある、わ。戦おうとしたみたいね」

「なるほどね、それから導き出される結論は?」

「不意打ちを食らって、抵抗した結果、やられたと言う事だ、わ」

その言葉に一同は慄然とする。

この地域に進出している冒険者は素人では無い。

そのパーティがたった一体の機械人形にやられたのだ。

「でも、それだけじゃ、無いわ」

歌音が付け加える。

「なんだって?」

歌音が自分から何かを言い出すのは珍しい。

しかし、それより由々しき事実があると歌音は言っている。

機械人形を、運用している。人達は…」

胸を押さえて呼吸を整える。

相槌を打ったのがフィリオリでは無かったために会話のリズムが崩れたらしい。

「…ある程度、発覚してもいいから実験を繰り返しているのか…。出会った相手を確実に殲滅出来る、能力がある、人形を…送り込んで来たのかもしれない、わ」

そこまで言い切ってから、胸を押さえて地面にへたりこむ。

「…歌音、分析ありがとうね」

フィリオリが歌音を労う。

それを見上げてニコッと笑う歌音。

「さて、詳しい事は後にしましょ。皆さんを神の慈悲で救うわよ!ユイ、エイナ。リザレクション準備。シニャさん」

「ん?」

「ジェムを出すから、お小遣い帳の書き込みよろしく!」

「はいよ」

苦笑しながら収支手帳を取り出すシニャ。

それを見てフィリオリ達はリザレクションを唱え始めたのだった。


・・・


数分後。

「気分はどうです?」

エイナは蘇生させたナイトに話し掛ける。

「ああ…。なんか体がやけに重い気がするんだ」

「それは、蘇生したての時に見られる現象です。暫く休憩すれば治るはずです。もし、数日経っても治らない場合は聖堂へ来て下さい」

エイナが説明をする。

「済まないが教えてくれ、一体何が起きたんだ?」

詰問口調にならないようにロンがリーダーとおぼしきアサシンに聞く。

顔は知らないので、フェイヨン以外の街からやってきた冒険者だろう、アルベルタアサシンギルドに所属しているのかもしれない。

「…見ての通り、どこからかやってきたガンスリンガーにやられたわけだよ」

「いきなりかい?」

プライドが傷付いている表情をしているので、目線を合わせた口調にする。

「ああ、油断した…」

ガックリと肩を落とす。このアサシンパーティの警戒役だったのだろう。

パーティを全滅させたと言う負い目を持つ、その気持ちはロンにも痛い程わかる。

「仕方ないさ、俺達の方にも来たんだが、奴が傷付いて居なかったらやばかったぜ。あんた達がダメージを与えてくれたので助かったんだよ」

周りの仲間達に聞こえるように言うながら、そう元気づける。

「そっか…」

アサシンの表情はすぐれないが、少し重荷が取れたような雰囲気を感じとる。

「そう言えば奴は?」

プリーストが疑問の声を上げる。

「ある程度まで追い詰めたんだけどね。逃がしちゃったわよ」

ロンが正直に言う前にユイが答える。もちろん、嘘だ。

「だから、私達も鋭意警戒中ってとこ。貴方達はどうするの?」

嘘を言った事に、疑問の表情を見せた歌音とシニャに一瞥くれて、ユイが言葉を続ける。

「ああ…。どうする?パトル?」

リーダーらしきナイトアサシンが聞く。

「…まあ、お宝も集まったし。一旦戻るか…新種報告もしないといけないしな」

「と、言う事だ。俺達は戻るから、あんた達は気をつけてな」

そう言って撤収準備のために立ち上がる。

「あ、そうだ。俺達の蘇生に使ったジェムの代金だが…」

その代金には蘇生手数料などが含まれたりするのが慣例だ。

「ああ、貴方達は初めてさんでしょう?気にしないでいいわ。次からはとるから」

「え?いいのか?」

意外そうに目を瞬かせる。

蘇生させてもらった場合は、それなりの代金を貰われるのが慣習だからだ。

「うん、ウチの方式でね」

「…分かった。恩に着るぜ」

「あ、そうだ。一つだけ聞いていい?」

初対面の人が多いため、背中に隠れて歌音に囁かれてフィリオリが言う。

「なんだ?なんでも聞いてくれ」

「ちなみに、新種報告するのは何なの?」

「ああ、武器を強化するゴブリンさ。苦労したからな」

「なるほど、ありがとう。それじゃ、撤収気をつけてね」

「ああ、そちらも」

そう言い合って、二つのパーティは別れたのだった。

FatoumataFatoumata2012/06/27 23:51Holy sinhzit, this is so cool thank you.

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2007-09-06ムナムナダーと王子様・3

ルベルタ北東旧封鎖地域


ルベルタ北東地域、つい数ヶ月前までアルベル商人ギルドの布告で、危険モンスターの徘徊により、立ち入った場合の危険性が高い為、事実上の封鎖措置が為されていた地域である。

だが、危険利益奇妙相関関係の為、少なからず人が立ち入っていた事もある。

そのほとんどが、危険に飲み込まれていったが。


その封鎖区域で、アサシンクロスのロンは木々の間に隠れ、辺りに注意を凝らす。

その視線の先には黒風や一夜達、いつもの冒険者仲間が、森の中にある広場周辺に展開している。

パラディンクルセイダースナイパーチャンピオンが外周を固め、内周をプリーストのユイとフォリオリ、見習いプリーストのエイナ、ウィザードのシニャ、歌音達の後衛を中心にした典型的な迎撃体勢をとっている。

この体勢をとっているのは、どうやら侵入した地域のモンスターテリトリーに入ってしまったからだ。

近くから感じるザワザワとした気配で、モンスターどもが周囲から迫って来るのが分る。


冒険者のセオリーでは、この場合は安全地域まで逃げる方が良い。

だが、自分達の戦闘力を勘案し、敵の規模によっては殲滅も選択肢に入る。

今回は、リーダーであるフィリオリの提案で、モンスターから採れる希少な品物(収集品=レクメタ、と総称される)を取得するために殲滅作戦を採ったのだ。

それに、自分達の実力であればこの程度の部隊に敗北する可能性は低い。

ロンに課せられた役割は、敵の誘導の為の囮及び警戒だ、二次的にユイ達後衛に浸透しようとする敵への攻撃も行うが、基本的に遊撃の役割となる。

そうこうしているうちに物音から敵の群が迫って来ているのが分かる。

事前の偵察だと、敵の構成はゴブリンの群だ、数は五十匹程度。

その中にゴブリンが作った飛行兵器に乗るゴブリンライダーの姿もいくつか見える。

ゴブリンは比較的知能がある種族で、人間からすると文化程度は低いが、独自の文化を持っている。

ことに集団戦闘に強く、個々の能力の低さを補う戦い方をしており、集団を相手にするには生半可な人数では対抗が難しい。


「よっ、と」

作戦どおりのタイミングで、クローキングを解除し群の前に姿を晒す。

「ウギギッ!」

「ギーギー!」

等と警戒の叫び声を上げて、様々な武器を持ったゴブリンが殺到してくる。

それに対してゴブリンライダーは、ほぼ同じ速度で迫ってきている。

兵器とはいえ、そもそも強引に空を飛んでいる代物だ、速度は速く無い。

利点は高所を取れる事と地形の干渉を受けにくい事だ。

先鋒のゴブリンのチェインを回避し、カタールを首筋に叩き込む。

そして倒れ伏すゴブリンに構わず、ゴブリン達に背を向けて仲間のいる方向へと走り出す。

完全に引き離さず、追いつかせずの絶妙な距離で逃げるロン。

「ギギウッ!」

異常を感じたのか、大きな羽根で鎧を装った個体が、鋭い警戒声をあげ、群を引き止める。

どうやら、群の指揮官のようだ。

こういった個体に率いられた群は強い。

だが

「グガ!?」

その個体を複数の矢が貫く。

スナイパーであるノココンの精密射撃だ。

そのまま倒れ伏した指揮官を茫然と見るゴブリン達の周囲の藪からロンの仲間達が姿を現す。

「しっ!」

鋭く息を吐く音が聞こえ、更に矢が一体のゴブリンが倒れ伏す。

「ギャウイッ!」

ゴブリンライダーの一匹が声を上げる。

その声を受けて、密集隊形を解き、やや開いた隊形になるゴブリン達。

しかし、それは集団の密度が少なくなり、中に浸透されやすくなったと言う事である。

「どっけぇぇぇ!」

その中に一夜がペコペコに乗ったまま突撃する。

ボウリングバッシュ!!」

両手に握ったクレイモアが重く唸る。

斬撃の暴風ゴブリン達を襲い、千切れた体の一部が辺りに転がる。

「ラクルさん!右翼に回った部隊に気をつけて!」

後方からフィリオリがチャンピオンのラクルへと声をかける。

「承知した!」

短く応えてラクルが右翼ゴブリンの集団の前に姿を晒す。

金剛!」

全身に気を漲らせて筋肉を防御先行の硬さにする。

「ホアッ!チョイアッ!」

ゴブリンの群へと飛び込み、拳や蹴りをゴブリン達に叩き込む。

殴る蹴る、と言った戦闘行動は、カイザーナックルを装備するとは言え、威力が武器を使うそれに対して地味というイメージがある、だが、鍛え上げられたチャンピオンの繰り出す撲打は肉を裂き、骨を砕く。

その言葉通りに、ラクルが次々とゴブリンを地に沈めて行く。

そのラクルの頭をガキンッ!と、急な衝撃が襲う。

一瞬グラッと来たが、立ち直り攻撃が来た方向を見る。

「ギャウアッ!」

少し離れた空中に浮いたゴブリンライダーが歯をむき出しにして威嚇している、どうやらこいつからの攻撃のようだ。

ゴブリンライダー武器は、強力なバネで打ち出すゴブリンのお面型の弾頭が主力というか、唯一の武器だ。

最終兵器は自爆と言う危険極まりないモノがあるが、それは勘弁して欲しい代物だ。

先程の攻撃は金剛を使用していたから無事だが、生半可な装備だと酷い怪我になる。

「ギャッ!」

次弾が発射される。

鋭いが発射地点が解りやすいので余裕をもって避ける。

発射したと同時にゴブリンライダーは方向を変えて離脱する。

「逃がすか!」

気を練り、それを凝縮して親指で弾く。

〝指弾″と言うモンク系唯一の飛び道具技である。

「ギャッ…」

急所を打ち抜かれたのか落下していくゴブリンライダー

地面に着いたと思われた瞬間、大音響と共に爆発が起きる。

「うあっちゃー。やったな」

爆風に顔をしかめてラクルはボヤく。

止めを刺しに行っていたら巻き込まれていた。

その爆発がきっかけになり、ゴブリン達は蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。

追撃はしない、事前に取り決めた事だ。

辺りから、戦いの音が消え、戦闘が終了する。

仲間達が三三五五集まって来たのを確認し、ロンはクローキングを解いたのだった。


「みんな、お疲れ様」

と、フィリオリが言って居る。

フィリオリはフェイヨンに流れて着て五年になる女プリーストだ。

楚々とした清純な雰囲気を持ち、冒険者稼業は不似合いと思われ勝ちだが、冒険者として長く過ごしている。

元は王都プロンテラの出身で、司教を超える役職である大神官の適格者だった、と言うのが本当か分らないが、本人の数少ない過去の話である。

鮮やかな緑髪を大きく編んで背中に垂らしており、今はそれを大きく揺らしながら戦場を走っている。

姿を現した仲間達に大きな怪我は無いようだ、既に収集品探しを始めている歌音や一夜がジャルゴン等を拾っては袋に入れている。

「いよう!ロン。俺の射撃見てくれた?」

木の上からノココンが滑り降りて来る。

「ああ、さすがだな」

「へへっ」

そう、素直に褒めると嬉しそうに笑う。

毎回のやり取りではあるが、不思議と飽きずに行っている。

「さて、俺達も収集品を探すかね」

ノココンが弓を背中にしまいながら言う。

「そうだな」

そうして、二人も収集品探しに加わったのだった。


忍び寄る者


パチパチと焚き火の火がはぜる。

一行は、昼間の戦闘場所より人里側の広場に下がり夜営をしている。

近くには別のパーティの夜営場所があり、夜の森であるが、人のざわめきが聞こえて来る。

「さてと、今日はみんなお疲れ様」

夕食を前にしてフィリオリが皆を労う。

「お互いにな」

と、未だに暑苦しく鎧を着込んだ一夜が応える。

クルセイダーらしく、寝る寸前までパーティの盾となる事を忘れない一夜らしい。

今日の収穫はまずまずね。利益は出るから皆にお給金は出せるわよ」

収集品の目利きをしていた歌音から報告を受けてフィリオリが言う。

それに仲間達の歓声が上がる。

「あとね、歌音が何か気になった事があるんだって。聞いてみて」

それまで、フィリオリの後ろに隠れるように座って居た女ウィザードの歌音に場を譲る。

「えっと…。あ、皆はご飯食べながら聞いてね」

ピンクの頭にウィザードハットを目深に被っている歌音は、口ごもりながら話し始める。

フェイヨン出身で、三年前からユイと一緒に冒険を始めたクチだが、未だに人前で話す事が苦手で、仲間達と一緒に居ても自分だけ魔法書を読んでいたりしている。

ただ、その甲斐あって道具の目利きや遺跡、遺物等の知識は深く、パーティ知恵袋となっている。

「今回、戦ったゴブリン達の装備を分析してみたの…」

そこで一旦言葉を切る。

人前で話しているので、緊張で息が続かないのだろう。

「んと。一部の装備は普通ゴブリンには考えられない強化が為されていたわ」

「それは、どの程度の改造だ?」

箸を止めて白風が聞く。

「…ん。オリハルコン式改造」


『つづく!!』

RMTRMT2007/09/26 11:22始めまして RMT-MSN担当の佐藤でございます^-^ http://www.rmtro-jp.com/blog/ 以上はこちらのホームページです、中で弊社の在庫と値段です、ご参考してから、もし何か要りましたら、ご連絡ください、以後で貴社に依頼しております、よろしくおねがいいたします^-^

2007-08-23ムナムナダーと王子様・2

朝・フェイヨン大通


「さあ、いらはいいらはい。今日は赤ポーションが安いよ~」

朝もやに包まれている通りにイツパの威勢のいい声が響き渡る。

おはよう、イツパさん」

「お、おはよぅノデンさん」

ポーションを買い求めた男剣士に商品を渡しながら、イツパは声をかけてきたブラックスミスを仰ぎ見る。

ノデン、フェイヨン商店街ギルドのマスターにして、常に溶接マスクを被り、アンテナを頭に装備している事で知られている。

また、モンスターからの収集品や遺跡からの発掘品の販売、加工を中心とした堅実な商売を行うが、怪しい発明を行う等の行動が目立つため変人扱いされている。

「ん?また工房で爆発かい?」

全身の所々にススや焦げを作っているノデンの様子に、そう尋ねる。

「うむ、キャノン砲を作っていたらな。爆発したのだ」

キャノン砲って…何やってたんだぃ?」

「うむ、威力を追求して、液体火薬を仕込んでみたのだが、いきなり引火してな。大変だったんだ」

現在流通している最新の液体火薬は威力は高いが、扱いを間違えると大事故を起こしやすいものが多いため、少し前のロットの需要が高い。

だが、ノデンを始め先端の武器を求めているブラックスミス達はリスクを取り、最新の液体火薬を使っている。

「なんでそんなリスキーな事を…。鍛冶の腕がいいんだから、そっちで商売できるだろ?」

「はっはっは。真理の追求は私のトレードマークさ!で、体が痛くて仕方ないので良く効くポーションをください、白がいいです」

「あーはぃはぃ。ヒール師匠にしてもらえばいいのに」

売り物から白ポーションを取り出して渡す。

「いやさ、師匠はこの頃、マナちゃんの朝練習をしているから、朝は捕まらないのさ」

受け取ったポーションをがぶ飲みして答える。

「ああ、そう言えばそぅか。マナちゃんはそろそろガンスリンガーになるんだっけ。なんで師匠はそんなに急いでいるのかな」

努力に加えて、適性があったのか、マナアーチャーを経てガンスリンガーへの試験はあと一つと言う状態になっている。

ただ、最後の試験が厳しく、準備を要するためにトゥーナとマナは集中して練習をしているらしい。

「さぁなぁ…。アレ絡みで思う所があったんじゃ無かったかね」

関節を大きく動かして調子を確かながらのノデン。

アレとは、身内でムナムナダー関係の事を指す隠語である。

「そう言えば、二か月前はやけに殺気立ってたょね。なんか、皆に矢継ぎ早に色々と聞いたり、頼んでいたょね」

イツパは在庫を補充しつつ答える。

「そうそう、ラムポさんが前代未聞の売上を出した時だ」

そのラムポはイズルードへと商品の買い付けに行っており、ここには居ない。

アレについて師匠は、ほとんど一人で解決するつもりだけど、大丈夫かなあ。1人で抱え込んで重さに潰されないか心配だぁね」

「だなぁ…。放って置けないんだよな~危なかしっくて」

トゥーナが居たら即座に憤慨するような事を言う。

「んだね。そぃや、ノデンさんは師匠から何か頼まれていなかったかぃ?」

「あーそうだ、マナちゃん用の銃の製造を頼まれていたんだった。隠密性の高いのが無いかって言われたから開発中でさ。途中、キャノン砲のアイデアが出たから寄り道したけど、やらないとな~」

「って、それで実験失敗してたんかぃ」

呆れた口調で言うイツパ。

「まぁ、そんな所だ。」

と様々な改造が施された風のカートに予備のポーションを積む。

「そいや、アルベルタの元締めの達の方には異常は無いかい?」

とイツパ。

「そうだな。探りを入れたけど、通商関係で何か締め付けがあったとかは聞かないよ。ラムポさんが気にしていた、砂漠からの収集品の仕入れの低下は、砂嵐の頻発によるものだろうし。思うに、プロンテラ大聖堂の奴等は商人ギルドに対しての干渉が出来ないんじゃ無いなぁ。ここにはナリスナ様が居るし、強行手段をとったら自分達が干上がるでしょ」

「だぁね。国レベルの干渉じゃ無いと。元締めのお歴々も動かないさ」

アルベルタに本拠地を置く大商人ギルドは、全ての国々と経済面での密接な関係を持っている。

それゆえ、経済面から各国の利害調整を平時から行い、各国を平和状態にする事を使命にしているとされている。

過去に何回と無く行われて来た国同士の戦争の苦い記憶は、薄まる事はあっても消える事は無い。


ただ、一部に利益の為に恣意的に戦争や紛争(人間相手にこだわらない)を起こす武器商人(闇ガラスと呼ばれる)が存在すると言われるが、その真相は闇の中である。

アレがそこまでの重要事項だったら、私らの予想は覆るけどね。他には…かなりの武力の圧力がかかると商人ギルドは弱いね」

「武力と言っても、戦闘集団の派遣は難しぃんじゃないか?大義名分でっち上げるにしても、軍を動かすには相当な理由が必要でしょ。並大抵の秘密部隊では効果無いだろうし」

と、イツパは肩をすくめる。

その言葉通り

「だけどな、一つだけ方法がある」

溶接マスクの奥から目を黄色く光らせながら言う。

「それはなんだぃ?」

「例えば機械の奴等の部隊を背景に迫られたりしたら、元締め達が方針を変える場合がある。軍勢とまで行かないでいいよなそれだと。…そう、中隊レベルで十分かな」

「あぁ、そうか。存在しない部隊を動かすには大義名分は要らないわな」

秘匿部隊…国同士で公式に存在が確認されて居ない部隊の展開に関しては、大義名分は必要無い。

闇の領域に存在する部隊がいるには、そう言った理由がある。

「そう言う事」

「しかし、アルベルタもそれなりの警備をしているだろぅ?私兵集団にしても、かなりの実力を持っているはずでしょ」

「イツパさん、奴等の戦闘力を忘れてるよ。中隊クラスの兵数になると、生半可な部隊では太刀打ち出来ないだろうさ。とは言え、おおっぴらに元締め達に事情を話すわけには行けないでしょ」

そうすると、ムナムナダーやマナの事が表に出てしまう。

「そぅだねぇ。色々と考えないとだねぇ」

ため息をつくイツパ。

「でもさ、実際どぅするょ?元締めに縦突くと厄介だろうし」

そう、深刻そうにノデンに聞くイツパ。

「うむ。面白い方に付く、これで完璧だ」

と、自信満々。

「あーもー。お前さんって奴わ!!」

ノデンの首を掴んでぐるんぐるんする。

「待て待て待て。何も考えてない訳じゃないのだ」

「言ってみぃ?」

しかし、ぐるぐる継続。

師匠が戦っている奴等への対抗策があるのだ」

「ふむ?」

取りあえず、手を止めてノデンを開放する。

「奴等の武器や装甲、それらは少しだけ解析できたんだ。もし、次に奴等がでても、なんとかなるって事さ」

へぇ何気に考えていたんだね」

「対抗用の武装は、いくつかをロンさん達に使ってもらっているのだよ」

「…機械の奴等がそんなにも徘徊してるのかぃ」

「いや、そうでも無いんだ。これに関しては予想が外れたな」

「で、なんか結果は出たのかぃ?」

「うむ、なんとなくだが感覚は掴めた。機械人形だけでは無く、それ以外の存在にも有効ってわかったしね。特殊ソードメイスに仕込んだ仕掛けが二か月前に有効だったのがでかいわ」

ちなみに、これは本人に内緒だったりする。

「それは分かったけど、まさかその仕掛けを施した武装を販売する気かぃ?」

「いや、金がかかり過ぎる。材料費、工賃を込み込みで販売したらこんだけかかるわ」

と、収支計算が書いてある紙を見せる。

「こんなにかぃ!?」

目を見開いて驚くイツパ。

「うむ、だから市場にコッソリと武器を流す作戦は潰えた」

「そりゃぁねぇ…本当にこれだけかかるのかぃ?」

コスト表を凝視しながら聞くイツパ。

「んだ」

「これじゃあ、気軽に作ってもらうワケにはいかなぃねぇ」

「量産化は難しいわ。もし、大量に機械人形の軍団が来たらゾッとするが…一か月ロンさん達が機械人形に出会ってないから、量産化されて居ないか、それとも秘匿兵器なのか。私としては前者がいいけどね」

「俺も各地の行商先でやけに強力なモンスターに関しては聞いているけどネ。多くのケースが自分より強いモンスターに負けて、それをやけに強いと吹聴しているトホホな話が多いょ」

だが、それらを倒す事が冒険者達の生活の糧になったりしているワケだが。

「ただ〝本当に強く、倒されていない″奴には要注意だぁね。件数の正確な数は割り出しにくいんだけどネ。ラムポさん達が倒したのはビンゴだったわけだけど」

不思議なのは、何故奴等があからさまな機械兵器を投入したって事さ」

秘匿兵器ならば、目撃者を消す事が必要だろう。

〝強い熊の噂″がラムポまでが知っていると言う状況は秘匿兵器としては情報管制がお粗末だ。

そう、イツパが指摘すると、

「ま、敵さんも事情があるんでしょ」

と肩をすくめる。

「私らとしては、どう対応するかい?」

「俺は変わらなぃよ。うちのギルド師匠達をフォローする。ノデンさんは?」

「〝こっちの方が楽しそう″だから、イツパさんと一緒さ」

その応えにイツパはニヤリ、と笑みを浮かべる。

「それじゃ、そう言う事で」

片手を上げ、工房へと歩いて行くノデンを見送り、イツパは商売を再開したのだった。