twonaの日記

2007-08-01むなむなダーと熊・18

「やー凄かったね!終わったんだね?」

近付いて来たラムポが興奮に顔を赤くしながら言う。

「あれ?それは何をしているんだい?」

吸収作業の事を言っているので説明をする。

「へえ…」

珍しそうにその様子を見ているラムポ。

その目の前で、詠香が吸収作業を進めていく。

(吸収完了、バルカンシステム、ブラスターシステムの取得完了。ミサイル技術データのみよ)

ややあって、詠香がさすがに疲れた口調で報告する。

「お疲れ様」

と、詠香を労う。

「ムナムナダー、変身解除」

変身を解除する命令を出す。

全身を覆っていた装甲が光な粒子となり霧散し、ムナック帽子とトゥーナの神経を繋げていた管も帽子に戻る。

だが、感覚が鋭敏なのは収まっていない。

ムナムナダーの時のようなレーダー画面が表示されたり等は無いが、いつもより周囲の状況が〝見える″のだ。

「うっく…」

管が抜かれた瞬間、膝が笑いグラつく。

「トゥーナ、大丈夫?」

マナが手を差し延べて来る。

「あ、ああ。ありがとう

その手を握り、かろうじて転倒を免れる。

「あ、ゴツゴツじゃなくなったねー」

マナが嬉しそうに感想を言う。

「辛そうだね。これ飲んだら?」

と、滋養と疲労回復ににいい紅ポーション差し出すラムポ。

こういう所の気遣いはさすが年長者である。

「変身は疲れるかい?」

ポーションを飲んで一息入れているトゥーナにラムポが聞く。

「ああ、まだまだだな…。で、仕上げをやるわ。手遅れになる前にね」

「仕上げ?」

怪訝そうに聞いて来る来るラムポに笑みだけを返す。

マナヨーン…こいつを生き返らせればいいんだな?」

「うん、そうしてくれる?」

「わかった」

と、リザレクションの準備を始めるトゥーナにラムポが焦ったように声をかけてくる。

「生き返すって!?正気かい?」

「ああ、だが必要な事なんだ」

「うんうん」

トゥーナの言葉同調しているマナ

どうやら、二人の間では色々と了解済みの事柄らしい。

「そいつは、何人も殺傷しているんだよ?生き返すなんてしたら、また振り出しじゃないか」

「こいつの破壊衝動は、外部から与えられたものなんだ。こいつ自身には、人を傷付ける意志なんて無かった、そう言う事なんだ」

地に伏しているヨーンを痛ましそうな目で見て答える。

「…生き返したら、また、私達に襲いかかるかもしれないよ?」

最後に指摘をする。

「その時は、本当に止めを刺してやるさ」

「…わかった。師匠に任せるよ」

「悪いね、心配かけて」

ブルージェムストーンを取り出し、リザレクションの詠唱を始める。

「…詠唱コマンド…」

リザレクションの光が収まった後、ヨーンに命の光が宿る。

だが、トゥーナのそれの威力は低いので、どうにか生きているレベルの回復の為、ヨーンは起き上がれない。

そのヨーンにトゥーナはヒールを連発し、癒して行く。

「グル?」

その様子を怪訝そうに見ているヨーンマナがパタパタと近付く。

「もう、大丈夫よ。貴方に命令する人はいないわ」

地面に膝をつき、ヨーンの顔を覗き込む。

貴方の居た山にお戻りなさいな。えーと…貴方の居た山は、あっちの方ね?んー…と」

何やら話していたが、困ったようにこちらに言って来る。

「この子が居た山は、アルフエンの森だけど、どうやったら無事に、ここから離れられるんだっけ?」

マナと視線が合うと、その〝アルフエンの森″の情景らしき像が視覚に投影される。

そこには見覚えがあった。

聖カトリピーナ寺院から北東の森林だ。

「一旦、北に行った後にリドルー川に沿って行くのがいいだろう。」

反射的に答える。

師匠、どうしたんだ?いきなり」

ラムポに言われて、はっとする。

「いや…。なんか、マナが伝えようとした事が見えたんだ…」

「?」

ラムポさんには、見えなかったみたいだね」

「だね、私に見えているのは、さっきからこの草原風景だけさ」と肩をすくめる。

「そっか…」

マナが何かをしたんだろうな、と思い軽いため息をつく。

「グルル…」

ヨーンがむくり、と起き上がる。

仁王立ちの姿勢はせず、獣の基本姿勢の四つ足の姿勢をする。

「じゃあ、北に一旦向かってね。今度は捕まっては駄目よ?」

マナにそう言葉をかけられたヨーンは、ベロリ、とマナの顔を舐めた後、トゥーナとラムポを見上げる。

(我、感謝する)

野太い声が脳裏に響く。

「え?」

見ると、ラムポも怪訝そうな表情をしている、聞こえているようだ。

(汝とこの少女が我を開放せねば、我は悪しき魂に束縛されたままであった。汝が我を必要とする事があったら、いつでも呼ぶがいい)

「…ありがとうよ」

そう答えると、ヨーンは身を翻してノッシノッシと北の方向へと歩いて行く。

「彼、本当に感謝していたみたいだね」

ヨーンが離れて行くにつれて鋭敏だった感覚が戻って行く。

「わかるのかい?」

「私も、動物癒したりするからさ。仕草でわかるのさ」

「そっか」

「さ、あと少しハーブを集めておくかな。師匠は休んでいてよ。後はやっておくからさ」

「すまない。頼むよ」

そう言ってから、マナを誘導して少し離れた場所に行く。

「トゥーナ、どうしたの?ラムポさんを手伝わなくていいの?」

草原に直に座ってマナが聞く。

「ああ、あとは大丈夫だってさ。マナが手伝ってくれて助かったって言ってたよ」

「えへへ」

マナ、さっきの熊さんの事なんだが。ワシが戦っている時に色んなものが良く見えるようになったんだ。お前さん、何かしてくれたのか?」

「んー。何かって言うわけじゃないわ。あの熊さんが助けを求めていたから…うーん、トゥーナに助けてもらったの」

かなり事実が省略されているため、サッパリ分らない。

だが、マナは満足そうだ。

「そうか。彼、何か言っていたか?」

「うーん、あ。思い出した!悪しき魂を持つ者達が、自分達にしたような事を色んな生き物にやっているんだって。気をつけろって言ってたわ」

「王都のラボか…」

(大聖堂に殴り込みをかけた時に陽動で立ち寄った王立図書館で見たアレの事ね?)

思い出すのも汚らわしいといった口調で詠香が言って来る。

「ああ、そうだ」

ラボと言う、ミッドガル王国が兵器開発のために設立した研究所、そこでは、人道をドブに捨てたような研究が行われている。

残念ながらそこまで襲撃出来なかったが。

「寄生兵器を増やさせるわけには行かないなぁ」

「なんの話?」

「ああ、ワシの独り言だよ。すまんな」

「ねぇ、トゥーナ?」

「ん?なんだい?」

「トゥーナは、あんなのにはならないでね?」

「あんなのって…熊さんの事かい?」

「ううん〝蛇″の事、あれはね過去しか見て無いの。だから、気をつけてね」

「大丈夫さ、過去にしか目を向けて居ないっていうのは、絶望の塊だって事だろ?ワシはな、絶望の天敵、絶望へ対抗する最大防衛機構なのさ」

「ふふふ」

それを聞いて嬉しそうに笑うマナ

そして、視線を上げてムナック帽子を正面から見る。

「詠香ちゃんもありがとうね。いっぱい入り込んでごめんなさい」

(!姫様…)

「お、おいマナ…。お前さんは詠香の事を知っているのか?」

「うん、さっき分かったの。このお帽子に居る女の子の事でしょ?」

(まさか、姫様は記憶が?)

マナ、もしかしてお前さんは、記憶が戻っているのか?」

異口同音にトゥーナと詠香は声を上げる。

「ううん。まだ何も…思い出していないの」

口元に微苦笑を浮かべてマナが答える。

「でもね、詠香ちゃんが私達の事をすっごく考えてくれてるって分かったの」

(姫様…)

「今はもう、聞こえないけど。詠香ちゃん、今日ありがとうございました!」

ペコリ、とムナック帽子へと頭を下げる。

(私は、姫様からこうやってお礼を言われてたの。もっと口調は高貴だったけどね)

「そうか…」

だが、これでいくつかの問題が見えて来た。「詠香」

呼び掛けてから、自分の考えを思考に乗せて、詠香に語りかける。(うん、分かったわ。今度、姫様のこれからの事を話合いましょう)

「ああ、頼むよ」

そして、いきなり黙ったトゥーナを不思議そうに見上げているマナの髪を撫でる。

「さ、そろそろフェイヨンに帰ろう。」

「うん」

髪を撫でたトゥーナの手を、自分の頬に当ててすりすりとしてからマナは答える。

そうして、二人はラムポの居る方へと歩いて行ったのだった。