twonaの日記

2007-07-12むなむなダーと熊・13

「詠香、状況を!」

暗号コードを含む電波確認…ジャミング波展開を確認。誰かが隠れて居るわ、どうする?)

「どうもこうも無い、確認してくれ!」

「了解、ECCM作動…!うそっ!?他に動体反応有り!10時方向より大型の何者かがこちらに急速接近!」

急に出現した別の反応に、詠香の声に切迫したものが含まれる。

「感知できなかったのか!?」

声を荒げて詠香に問い掛けつつラムポに指示を出す。

戦闘行動の経験に関してはトゥーナの方が長けているため、指示出しはトゥーナが行う。

ラムポさん、マナを連れて退避よろしく。だけど離れ過ぎないようにしてくれ!」

背中から特殊ソードメイスを降ろしながら警告を飛ばす。

「わかった、コルン!」

ラムポの言葉に応えてコルンが近くの藪から飛び跳ねる。

「私とマナちゃんを守れ!」

命令変更を伝える。それにぽよぽよと音を立てて応えるコルン。

藪を突っ切り、ラムポ達の側で戦闘体勢を取る。

「私達は、沢の辺りま退避するよ!」

と、ラムポが伝えて来る。

ラミ渓谷を流れる沢の周辺は起伏があり、隠れ場所に最適だ。

直線的な軌跡で攻撃をする射撃兵器には相性が悪い地形である。

「詠香、敵の規模は?」

走って行くラムポとマナを見てから尋ねる。

(大型の敵が1、アンノウン1よ。えーと?ザルドガルド工廠の起動刻印のある兵器の駆動パターン確認)

「アンノウン…ああ、隠れている奴か。で、ザルドガルドってのはなんだ!?」

(分らないわよ!いきなりデータバンクが立ち上がったんだから!)

先ほど、トゥーナに怒鳴られた事で気分を害していたのだろう、がっつりと噛み付かれる。

そう応酬をするうちに林から地響きと唸り声が聞こえて来る。

「なんつー殺気だ」

基本的に野生動物が殺気を充満させる事は少ない、それを発散するのは、狩りにおいて獲物を追う時と、縄張り争い等の戦闘に入る時の最終段階である。

積極的に争いを好む傾向は野生動物に近いビッグフットには見られないと言っていい。

そのセオリーが通用しない相手なのか、それとも完璧にこちらを獲物と見ているか、どちらにしろロクでも無い状況だろう。

退避を急ぐラムポ達の後ろに陣取り、敵を待ち受ける。

敵の注意を引き、攻撃をラムポ達に浸透させないのが狙いだ。

気配に耳を澄まさなくても、木が強引に破壊される音が響き、ドウンッドウンッと重い音を立てて林が吹き飛ぶ音が、すぐ側まで近付いているので接近がわかる。

「詠香、ムナムナダー変身シークエンスをよろしく。状況に合わせて即座にムナムナダーを展開したい。いけるか?」

速度増加スキルブレスキリエの戦闘スキルセットを自分に展開する。

(わかったわ、やってみるわ。今日パターン1ね、よろしく)

「あれかい…」

緊迫した雰囲気が一気に霧散しそうな変身の踊りを頭に浮かべる。

もとよりやる以外に選択肢は無いのだが、ここでイヤイヤをしておかないと、喜んでやっていると思われかねないからだ。

(なーに複雑な心理描写をしてるのよ!タイミング調整はオーケー?)

「わかったって…いくぜ!!おしーりふーりふーり…」

見事なお尻フリフリを見せるトゥーナ。

「ムナダー、ムナダー…」

今度は、前後に腰を突き出す、鋭く、素早く、だが優雅にがポイントだ。

(シークエンス完了、ムナムナダーエネルギーは良い子を守るために満タンよ)

胸の奥に熱い何かが宿る、それは闇を祓い、誰かを守ろうとする純粋なる意志。

詠香から、いつでも変身可能と言う報せを受け、頷く。

「わかった!」

そう応えた時に、トゥーナの目の前の木々が土煙と共に吹き飛ぶ!

「おわっと!」

無数の破片が飛んでくるのを、バックラーを構えて弾き、避ける。

ゴウンッと重く空気を割く音がして、自分の腰周り程ある木が頭上を飛び過ぎて行ったのを見てゾッとする。

その土煙が収まった後、そこにそれが居た。

「こいつか…」

(こいつね…)

異口同音にトゥーナと詠香が呻く。

「グルルルルル…」

唸り声を上げて目の前に立っていたのは

(体高約4.5メートル、右腕にザルドガルド工廠製の多砲身型のアタッチメント〝トール後期型″のカスタムバージョンを融合させた、ビッグフットベースのヅィーゲを確認。識別ネーム…ヨーン)

詠香の敵スキャン結果が脳裏に響く。

どうやら、ザルド某と言うのは武装を作った工場の事らしい。

そして、その言葉通りの巨大な熊がそこに居た。

熊の威嚇体勢である仁王立ちをし、狂気に燃える瞳でトゥーナを見下ろしている。

「なるほど、例の武器は右手に装備か」

やや長めの砲身が二つ付き、そこを中心に何か箱状のものが五つと、下の砲身の後半分に小さいパネルが一列に10枚位並んで付いた部品群が設置された、巨大な武器を右手に装備している。

じっと見ると、それはビッグフットの生体に強引に食いこまされたものだとわかった。

何本かの動力パイプ、固定具が深々と絡み付いており、それから血や膿が滴っている。

「酷いな」

ビッグフットが白ハーブを食べていた理由が分かった。

(あの傷の回復の為に食い荒らしていたのね。でも、あの設置方法じゃあ、生体を傷付けるだけよ。相当下手な設置手術ね)

「それで、ハーブに近付く冒険者を狙った訳か?」

(さあね、さっきの通信波の解析を行っているわ、それで何か分かるかも?)

「奴が、悠長にそれを待ってくれるかな?」(やる気満々だから無理じゃない?)

「そうだな…」

肩口から背中に手を回し、特殊ソードメイスの柄を握る。

それに反応したのか、ヨーンが右腕を跳ね上げて銃口をこちらに向ける

「っ!」

その仰々しい砲身に似合わない軽い銃撃音がし、銃弾が銃口から吐き出される。

音速に近い速度を持つ銃弾を見る事は難しいが、外れた弾頭が地面その他諸々に着弾し、破壊するのを見て、人を破壊する能力があるのを実感する。

「あわわっとッ!」

自分を狙って扇状に弾丸がバラまかれる、それを横に飛んで避ける。

射線をギリギリズレているが、いくつかの弾丸がキリエの障に弾かれて地面に落ちる。

その作用の後にキリエの輝きが薄れて、効果が減少している事を横目で確認する。

「だー近付けるんか!こいつは!」

銃撃が停止した時にづく。

(ヨーンは、弾丸を再装填中よ。あの箱のどれかがマガジンになってるわね)

駆動音から詠香は分析しているようだ。

「ならば!」

装填の隙に間合いを詰める為に駆け出す、ある程度の距離であれば間合いを外せる事に賭けたのだ。

「グルルルッ!」

接近して来たトゥーナに、ヨーンは銃口を向ける、が装填が済んで居ない為、弾丸は吐き出されない。

「だっ!」

展開済みの特殊ソードメイスを振り上げて武器腕に叩きつける。

がきぃん!と反響音を残してソードメイスが弾かれるが、いくつかのパイプが断ち切られる。

「硬ぇっ!!」

ソードメイスの柄を通して伝わって来た衝撃に手が痺れる。

(今の衝撃探査で分かった事は、トール後期型の装甲は硬度7。運動エネルギーにもよるけど、貴方武器の有効性は低いわよ)

「わかったよ…。詠香、ムナムナダー変身準備」

ブラストクリップをセイントローブの胸元に付けながら指示を出す。

(三秒稼いで、ヨーンは攻撃体勢よ)

ムナムナダー変身シークエンスを展開しているのか、詠香の言葉に甲高い音(詠香は電子音と言っていた)が頻繁に被さる。

「了解!」

時間を稼ごうと再度攻撃を仕掛ける。

だが、それはヨーンに見抜かれていたようだ。

「ガアッ!」

予想を上回る速度で、武器の無い左腕のパンチが飛んでくる。

巨大なそれを食らったら、常人ならば簡単に戦闘不能に陥るだろう。

「!」

追撃を停止して、その余裕を回避に回す、セイントローブの背中の布が破られたが回避に成功する。

(トゥーナ、ヨーンの熱量の増大を確認!気をつけて!)

「!」

腕を振り抜いたヨーンがその勢いで一回転し、武器腕の銃口を向けている。

ざわっと悪寒が走り、足に力を込めて銃口から逃れる。

ブラスター来る!)

詠香の声と共に一気に跳躍する。

ババンッと、張りのある革を棒で叩いたような音が辺りに響き渡る。

「うひゃっちっち!」

すぐ脇を強烈な熱線が通り過ぎて行く。

詠香の事前の説明どおり、輻射熱が体半分を瞬間的に灼熱させ、戦闘状態で分泌された汗を一瞬に蒸発させる。

「ファイアボルトを完全に食らった時みたいに熱いな」

遅れて生じた火傷にヒールをかけてボヤく。

(ヨーン、エネルギー充填中。完了時間は未定。銃弾のリロードは完了の模様)

「あの攻撃パターンがケンジ達を苦しめた訳だな…」

ヨーンより俯角の位置に居る標的を狙ったため、着弾地点のハーブがゴッソリと灰になり、地面から煙が立ち上ぼっているのを見てゾッとする。

(近、中、遠距離オールレンジ攻撃が出来るわけね)

兵器として理想系と言える。

だが、得てしてそういった特性はどこかでぶつかりあうのが常識だ。

剣士がより高い攻撃力を目指して騎士になるか、より高い防御力を求めてクルセイダーになるかを悩む事から分かるように、一つを立てれば、他方がどうしても引っ込む。

それを補うには、特別な何かが必要なのが必然だ。

果たして、それをやっているヨーンは、何をしてオールレンジ攻撃を可能にしているのだろうか?

≪続く!!≫